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僕らが作ったギターの名器
- 2015/6/7
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椎野秀聰(しいの ひでさと)
この本で一番感動したのが、以下の文章でした。
●旅を通じて私が実感した彼の地の音楽の伝統は、決してアカデミックなものではなかった。学校で学ぶ音楽ではなく、もっと生活に寄り添い、日歩に暮しを豊かにするような音楽だった。それが、私には少なからず衝撃的だった。ボデイブロウのように、何か腹の底にずしりと重たいモノを突きつけられたように感じた。
一例を挙げれば、パリの製作家ロベール-ブーシェは、美術学校の教師で、また画家でありながら、自分の愉しみのためにギター制作を始めている。また、スペインからイギリスに渡ったロマニリョスは、祖国スペインを想う気持ちからギターを欲したが、本格的なギターを買うお金がなく、しかたなしに自分でギターを制作し始めている。どちらも純粋な趣味から始まって、世界の名工へ列せられるまでになっている。これを一体どう考えればいいのだろうか?彼ら天賦の才に恵まれた名人で、たまたま人生の途中からギター制作の道に入った例外と解釈すればいいのだろうか?」
そうは私は考えない。彼等には自身の内から、ほとばしり出るようににして、あらかじめ「音」が在ったのだと考える。楽器製作者にとって、もっとも本質で不可欠の要素、「己の求めるサウンド」が明確にあったからこそ、二人は天賦の才を活かすことも可能だったのだろうと思う。それこそが血肉となった伝統のなせる業、ヨーロッパの音楽、楽器製作の歴史そのものだと、私は解釈した。
ほとばしり出るようにして、あらかじめ「音」が在ったのだというところは心に響いてきますね~(^^)v 人は、誰かに教わったから、それが美しいとか、先生にこういう絵は素晴らしいからと教わっていて、それを美しいと感じるのではなく、もともとその美しさを知っています。誰かに教わったのではなく、先験的にアプリオリにそれを知っている。ともあれ、この本は、楽器製作に携わる方々の、心の奥にある、ほとばしる情熱を、愛を感じるようなご本でした~(^_^)/